表現力の授業⑦

 提出書類のヒント集です。ここからは1ページが長いですから、読み物としてのんびり読んでください。

提出書類のヒント集

教育の二面性

 ここでちょっと教育の話をしましょう。
 教育には教育の概念と言うのがあります。教育の概念には二つの面があります。これを教育の二面性と言います。
 ひとつの面は、英語で言うところの【education(エデュケイション)】、日本語では“教育”と翻訳されていますが、もともとは“引き出す”という意味です。そして、もうひとつの面は【instruction(インストラクション)】、日本語に訳すと“形、型にはめる”という意味になります。教育には、これらの二面性があります。
 【エデュケイション】とは何でしょうか?日本語訳の“教育”が示す通り、教育によって個々の能力を引き出すことにあります。その前提となるのが、個々人の思考力になります。ある課題に対し、自分で解決する方法を見つけさせる姿勢での教育です。もともとの学校教育が目指すところの人間教育です。
 それに対し、【インストラクション】とは何でしょうか?これはインストラクターという言葉を思い浮かべれば分かりやすいと思います。スポーツの先生、楽器の先生、運転免許の先生他、技術的なこと、やり方を教え、基本的な形を持たせることを意味します。勉強で言うなら、漢字の書き取りなどよい例でしょう。好き勝手に漢字を書くわけにはいきません。基本的な、知っておくべきことを教える、難しい言い方をすれば【特定の構造を内面化させる】ことを目的としています。知識を詰め込み、知識を覚えて基本形を作るのです。これをやっているのが学習塾や予備校です。ですから、私は自分のことをティーチャーとは言わず、受験インストラクターと呼んでいます。
 この二面性は、どちらが重要と言うものではありません。どちらも教育には必要とされるものです。【エデュケイション】で思考力が必要だからと言って、何の知識もなければ思考などできません。また、その逆に【インストラクション】を重視してたくさん知識を詰め込んだところで、思考力がなければ何の役にも立ちません。どちらか一方に片寄っては、教育は成り立たちません。教育では、この二面性のハーモニーが大切なのです。
 これまでの歴史を振り返ってみれば分かる通り、学校教育は、受験地獄だのお受験だのと【インストラクション】に振り回されてきました。とにかく知識を詰め込んで進学させなければ、学校の先生たちだって大変です。それをサポートするかのように受験産業が発達し、偏差値重視、数字で大学をランキングし、それが人物の評価にもなっていました。正に学歴社会です。
 この状況が正常であるとは、とても思えません。
 そこで最近では、この【インストラクション】よりも【エデュケイション】を見直そうとしているのです。それこそが、特別選抜、総合型選抜の理念であり、ゆとり教育が目指したものなのです。
 数字でランキング付けし、進学先を決めるのではなく、数字で誰かと比較するのではなく、個人が自分の判断で進学先を決めていく、その材料としてこれまでの【エデュケイション】が評価されます。
 【エデュケイション】とはどんなものか、もう少し考えてみましょう。よく言われるのが学校で行われる人間教育です。学校では様々なカリキュラムで教育がおこなわれます。けど、よく考えてみましょう。学校で行われるカリキュラムって?英語?数学?国語?学習塾や予備校で行っている授業と同じ【インストラクション】ではないでしょうか?しかし、これらのカリキュラムは校種によって法律で定められている“目に見えるカリキュラム”にすぎません。学校の教育ではもうひとつ大切なカリキュラムがあるのです。そのカリキュラムのことを“隠れたカリキュラム(ヒドゥン・カリキュラム)”と言います。
 使い古された言葉ですが、机に向かって教科を学習するだけが勉強ではありません。休み時間、放課後、先生や友達と活動するあらゆる場面で教育が存在します。よく『部活動は教育の一環』なんて言われますが、それなどそのひとつでしょう。
 ここで特別選抜(学校推薦など)、総合型選抜の出願書類を見てみましょう。
 そこで問われているのは、課外活動を始め、正にヒドゥン・カリキュラムではありませんか?  教科書や参考書、先生の説明の中からでは学べないことを学び、それを評価する、それが特別選抜であり、総合型選抜なのです。
 ですから、ただひたすら【インストラクション】に徹し、偏差値を上げることばかり考えてきた受験生にとっては、特別選抜、総合型選抜などとうてい向いてないでしょう。勉強もそこそこ出来て、思い切り高校生活をエンジョイし、そこから次へのステップを目指す受験生たちこそ、歓迎されるのです。

  追伸:高校生活を思い切り“恋愛”でエンジョイするのも青春のひとつだと思います。けど、未だかつて恋愛を志望理由に書いて合格した例はありません。恋愛でトライするのも面白いかもしれませんね。

 

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