学校教育が目指すべきCEFRとは
さて、前項で説明した4技能+やりとりのCEFR評価を元に、その第二言語学習者の言語熟達度(習熟度)を判定します。現在、文部科学省が設定している外国語習得目標は、
中学生の英語 → CEFR-A1(以上)
高校生の英語 → CEFR-A2(以上)
…です。実際、それがどの程度達成できていたかの調査結果が(コロナ前ですが)以下のサイトにありますので参考にしてみて下さい。
第二言語習得で、何が変わるのか
さて、ここまでお話してきて、実際にどのように学習すればよいのか見ていきたいですが、その前に騒がれていることについて説明しましょう。新しい学習指導要領が導入された時、
中学生で覚える文法事項が増えた!
とか、
覚える英単語が増えた!
とか、
中学1年でいきなり不定詞を教える!
とか騒がれました。
このサイトで英語教育は外国語学習から第二言語習得へと変わったとお話ししていますが、それが正にこの部分に出ています。
例えば、覚える単語が増えた、とのお話です。
皆さんに聞きます。
普段、日常生活を営んでいる中で、自分の家の電話番号を書くような状況があるでしょう。その時、数字を全てひらがなで記入しますか?
『ぜろさんなないちいちごよんよんごろく…』(0377154456)
また、自分の年齢を記入する欄に、『じゅうなな』(17)と書きますか?
ウザいですよね(笑)?
では、これまでの英語教育では?
数字の読み方を英単語として【書けるように】必死に覚えさせました。
『 one two three four five six … 』
スペルが間違っていたら?10回書き!なんてことをしていました(笑)。
言語実践能力において『数字の読み方が書ける』ということの優先順位は低くなります。
そう!
書けなくても、発話出来れば、聞いて理解できれば良い単語が増えたのです!もちろん最終的に書けるようになれれば良いのですが、CEFRでの優先順位はこれまでよりも低くなります。こんなことに時間をかけるより、もっと優先的に学ばなければならないことがある、それがCEFRです。
英語の一般動詞に、不規則変化動詞というのがあります。
実際に、第二言語として英語を習得し、インター・アクション(後述します)をしてみると、英会話の中で頻繁に使用することに気がつくでしょう。なぜなら、不規則変化動詞というのは人間の基本的な動作・行動を表す動詞で、古代英語における外来語の影響を受けて来たからです。
アルビオン(イギリスがある島)がラテン系民族(ローマ帝国)に征服されたり、ノースゲルマン(ノルマン人)に征服されたりするうちに形成された動詞です。have はゲルマン系、wentはラテン系だそうです(興味があったら、新設される『世界史探求』の授業の『問い』にしてみよう)。
人間の基本的動作を示す動詞なら?
当然、英語の実践能力からすれば、最優先で学ばなければならない事柄になります。ご丁寧にbe 動詞から学んでいく暇などありません。
初対面のアメリカ人に向かって
Can you speak English ?
と聞く前に、常識で考えましょう。
初対面の日本人に向かって
あなたは日本語が話せますか?
と聞いた時の相手の反応を。
それでも分からなければ
Do you speak English ?
と言いましょう。
こんな簡単なことから、相手の文化を知らなければ分からないようなことまで、コミュニケーション能力を身につけるには様々な課題があります。これら全てを含めた評価によって、その学習者のコミュニケーション能力を判定する、それがCEFRです。
不定詞?『want to ~』のようなものは『不定詞の名詞的用法』などと言わず、『モダリティ(話し手の気持ちや主観的態度)』と言い、コミュニケーションにおいて優先的に習得する必要があります。
このように、文法が増えただの覚える単語が増えただの騒がれている原因は、外国語学習から第二言語習得へと変わることで優先順位も変わった結果なのです。そして、その優先度が理解できれば、驚いたり騒いだりする必要などないのです。
きちんと英語を第二言語として習得した人なら、よく分かっていることでしょう。もちろん、私たち塾・予備校では、これを宣伝のネタにして客集めをしたりしますが…(笑)。
中学生が目指すCEFR
高校生が目指すCEFR
大学入試で目指すCEFR(上位大学?)
大人世代が学んだ英語教育
学校によって、先生によって、第二言語習得について疑問を持ったり理解しなかったりして旧来の方法で進める場合があります。CEFRでの優先順位を無視してこれまでどおり『数字の読み方』を定期テストの問題に出題されるのではないか、と、私自身、正直、指導する際は不安です。ここら辺、きちんと事情(傾向)をつかんで勉強(対応)を進めてください。内申は大事ですからね。
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