新学習指導要領の英語

CEFR

新学習指導要領に出てくるCEFRとはⅠ

 CEFR(セファール/シーイーエフアール)は、2001年にヨーロッパで開発された『ヨーロッパ共通参照枠 (Common European Framework of Reference for Languages)』 、異なる言語を共通の基準で評価する国際指標です。詳しくは他のページで説明していますが、要は、EU統合が進み、人が自由に往来できるようになったヨーロッパで、母語以外の言語を使う必要が生じた、そこで、どの言語にも使用できる共通の参照枠、基準で評価しようということで開発されました。
 そう。
 使う言語でどの程度の意志疎通が出来るかを判定する標準(参照枠)なのです。
 高校で学習するのは『外国語』です。外国語なら何語でも良いのですがほとんどの高校では英語を教えます。その英語学習を外国語学習と呼んでいますが、そこをまず『外国語学習をするのではなく第二言語習得を目指すのだ』と認識を変えるようにしましょう。

第二言語の熟達度評価 CEFR

 他の専門的なサイトでも詳しく説明していますが、ここでは『分かりやすく』説明したいので、一応、簡単に説明します。
 文部科学省が中学・高校で学習する英語のレベルとしてCEFRを導入しました。このCEFRが測る基準(標準)は、外国語学習のレベルではなく第二言語習得の『程度・熟達度』のレベルです。第二言語がどの程度使えるのか、第二言語を使って何ができるのか、それをレベルで判定する参照枠(標準)となっており、文字通り第二言語言語運用能力を判定します。
 ヨーロッパの人たちは自分が使える二番目の言語、つまり、第二言語の『言語パスポート』というのを持っています。そこにはその言語を使って何ができるのかが書かれています。その熟達度評価をA1C2までの6段階に分けたのがCEFRです(※クリック(タッチ)すると別窓で画像が開きます)。

CEFR

 C2が最も高いレベルで、A1が初級となります。
 CEFRのランクを言語運用能力を基準に大きく3つに分け、

 Cランク:熟達した言語使用者
 Bランク:自立した言語使用者
 Aランク:基礎段階の言語使用者

 と分類しています。これらを6段階に分けて

 C2:母語話者と遜色ない熟練者
 C1:優れた言語運用能力を有する者・上級者
 B2:実務に対応できる者・準上級者
 B1:習得しつつある者・中級者
 A2:学習を継続する者・初級者
 A1:学習をはじめたばかりの者・初学者

 と分類しています。くどいようですが、これらは言語運用能力に基づくランク分けです!言語知識の量を競うお受験英語ではありません!!

 因みに、日本語のC2レベルは日本語を第一言語とする日本人でも難しいです。
 『え?日本人なら誰だって日本語が出来るでしょ?』
 いいえ。
 これをお読みの皆さんの中にも日本人であるのに日本語の文字が読めない、日本語の意味が分からない人がたくさんいますよ。
 『諮る』『就中』読めますか?
 『よしんば』『すべからく』意味がわかりますか?
 まぁ、ここらへんは言語知識の範疇ですし外国語ではなく母語の話しですが、要は、いろいろな言語が飛び交う国際社会においてその言語をどの程度使用できるか言語運用能力)を判定する基準、それがCEFRだと認識しておきましょう。

 新しい大学入試改革を行う際、最初の段階では、それらに対応する英語の検定試験(外部試験)の結果を大学入試(共通テスト)に使用するという方向で動いていました。大学へ進学するならどの言語においてもCEFR-B1レベルが相当だとされています。

文部科学省【各資格・検定試験とCEFRとの対照表】

CEFRが判定する言語活動

 では、その言語運用能力とはどのようなものでしょうか?

 第二言語を習得するには、その言語に関する知識、いわゆる『言語知識』が重要です。何が何でも、何はともあれ『言語知識』がなければ話になりません。
 時々、『そんなもの必要ない!外国へ行けば自然と外国語が話せるようになる!』と本気で信じ込んでいる方がいますがそれは不可能です。現地で生活して、生活に必要な外国語を覚えて生活をしているという方がいますが、そういう方が身につけた外国語のことを、語学教育の世界では『サバイバル・ラングエッジ(その国で生きていくのに最低限の言語)』と呼び、第二言語と呼べるレベルではありません。

 さて、その言語知識を身につけることが大切ですが、これまで高校入試、大学入試では、この身につけた(英語の)『言語知識の量』を測る試験が行われたため、言語知識の量ばかり競って、肝心の『知識を使う』という訓練をしてきませんでした。その結果、中学・高校と6年間も英語を学習したのに、第二言語とはならなかった現実があります。全く実用的ではない英語教育が行われてきたのです。英語の言語知識を競う国際的なクイズ番組でもあれば優勝間違いなしでしょう!と言いたいところですが、その番組司会者の話す英語が分からず、訳の分からない行動に出て大恥かくのがオチですね(笑)。

 そう!
 どんなに沢山の言語知識を覚えても、実際にそれらの知識を使って、言語を使えるように訓練しなければ、それは第二言語とは呼べないのです。そのために必要なのが『言語活動』です。

 言語知識を使って、何をしようというのでしょうか?
 その最終目標はもちろん『コミュニケーション(やりとり)』です。
 この『やりとり』をするために、語学では4つの技能が必要とされます。
 それが『読む』『聞く』『話す』『書く』で、『4技能』と呼ばれています。
 大元となる『言語知識』をしっかり身につけ、これら4技能を『訓練』することによって『やりとり』が出来るようになる、それがここでいう『言語運用能力』なのです。

CEFR

 この4技能と『やりとり』の熟達度(習得度)を判定するのがCEFRです。
 これら4技能と『やりとり』のことを、4技能5領域と呼んだり、新学習指導要領では『5つの領域』と表現しています。また、これらを用いることを『言語活動』と呼んでいます。

CEFRが判定するのは、この4技能5領域だけではない!

 CEFRが『言語運用能力』を判定する以上、これら4技能5領域だけを判定することはありません。この『言語活動』だけでの言語運用は無理なのです。そこで必要となるのが人間としての『コミュニケーション能力』です。CEFRでは、この『コミュニケーション能力』も判定対象としています。因みに、新学習指導要領ではここら辺を『言語の働き』で説明しています。

 コミュニケーション能力とはなんでしょうか?
 まず、1970年代にアメリカの言語学者デル・ハイムズが提唱したコミュニケーション理論の中で以下の4つを提唱しています。

 ①文法能力
 ②社会言語能力
 ③談話(ディスコース)能力
 ④方略(ストラテジー)能力


 です。
 ①文法能力については前項でお話しましたが、それ以外にも②社会言語能力③談話能力④方略能力等、コミュニケーション能力に関する能力があります。
 CEFRでは4技能5領域だけでなく、これらコミュニケーション能力も含めて6段階判定されるのです。よって、CEFRで判定するなら、これらコミュニケーション能力も身につけなければならないのです。

 

新学習指導要領に出てくるCEFRとは、これまでのような英語に関する『言語知識』の量を測る基準ではなく、その言語(英語)を使って何が出来るかといった、言語実践能力の熟達度、習熟度を判定する基準(標準)です。その判定は、4技能5領域(言語活動)だけでなくコミュニケーション能力(言語の働き)まで対象となります。

 

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