歴史総合の授業③

歴史総合

20年以上前の授業を『歴史総合』と呼んでいます

 前頁の授業、靖国神社の写真を出した直後、一瞬で静寂が包みました。けど、その静寂は『凍り付いた静寂』ではありませんでした。明らかに彼らの中でパラダイム・シフトが起きていることが感じ取れました。その証拠に、一週間後の総合科目の授業では前回の授業に関する質問や、説明を求められ、その内容は明らかに『日本人の考え』を知りたがっていました。
 そして、そこに敵意はありませんでした。
 そして、私自身が気づかされました。

国際化の時代に必要なスキル

 お互いがお互い、相手は違う文化の人間だと知っています。
 けど、何が違うのか、それを知らない。
 自分たちにとっては当たり前すぎて、相手と違うことを知らない、相手にとっては当たり前すぎても、自分たちにとっては極めて異質。
 それが何かを知らないから摩擦が起きるのです。

留学生『先生!日本の女って、馬鹿ですねぇ~(笑)!!』
私『悪かったな!俺は、その日本の女の息子だよ(激怒)!!』

 今ではもちろん、怒るのは演技です。けど、指導上、これは必要なことだと考えています。
 日本語が上達し、私(先生)との関係性が深まって、つい相手が日本人であることを忘れて、彼らが口走ってしまうのです。関係性であっても、国籍の違いというルールを忘れてしまったら、そこに摩擦が生じます。そういうことを知らなければならないのです。…っつうか、相手が大阪出身ということを忘れて東京モンが大阪人を馬鹿にしたら怒り出すでしょ(笑)?


 その後、毎年、総合科目の授業を行ったのですが、当然、年に1度は前頁の授業を行います。
 初回は私自身敵意の塊でした。ちょうど小泉純一郎首相の靖国神社参拝で大騒ぎしていた時期で、彼らの鼻を空かせてやろうという意地悪な気持ちでいっぱいでした。けど、繰り返すうちにその考えが愚かだったことを痛感させられました。これは『本気でぶつかれば相手は心をひらく』という1つの例で、そこから相手を変えようとか、無理に相手を理解しようとするのではなく、知ろうとすることが大切です。
 毎回毎回、総合科目の授業では、同じような反応が返ってきます。
 『日本人の考え』を知りたがります。
 そんな彼らに対し、私はこう答えます。

私『ぜひ大学へ行って日本人の学生に聞いてください。そして、気が合ったのなら友達になってください。』

 世間では『異文化理解』なんて言葉が軽く語られますが、その『異文化』って何?そもそも『文化』って何?そう聞いたところで、まともに答えられる大人がどれほどいるでしょうか?
『国際社会ではお互いの文化を尊重し~』
 だから、その文化って何なの?
『彼らの習慣を理解しぃ~』
 だから、彼らの習慣って何?
 誰も答えられません。
 そもそも文化や習慣を知ろうとするなら、それ以前に歴史を知らなければ異文化理解などと口にしたところで、何のことか分からないのです!

 明治維新の授業の後、次の週の授業まで、同国人同士、時にはクラスメイトの他国籍の留学生と、激論を交わしていたそうです。
 自ら知ろうとする意欲、探求しようとする意欲、話し合うことで新しい発見をしようとする意欲、彼らは留学生だから、といえばそれまででしょうが、そんな彼らの姿勢を見ていた時、ふと夕方からの仕事でやっている授業に来る日本の若者の姿と比べてしまい、日本人学生にこそ『総合科目』が必要だ!と考えました。今へつながる歴史、そして、自国の歴史と他国の歴史を繋げる授業。それは決して今でいう『教壇の賢者』が、一方的な知識を詰め込むのではない。学習者自身に意欲を持たせ、主体的に学習者自身が答えを求めていく授業、これは日本人学生にも絶対に必要です!
 その光明を、私は『歴史総合』に見出しました。

中学校の歴史分野で学びます

 イスラム教。
 先生が面白半分に話します。

先生『イスラム教では、奥さんを何人ももらっていいんだぞぉ~』
女子学生『えぇ~~!信じらんなぁい!きもぉ~!』
男子学生『えへへへへ・笑!』

 イスラム教の世界では国によっては一夫多妻制です。
 それを聞いた非イスラムの人間は、男ならニヤニヤし、女性なら嫌な顔をするでしょう。
 けど、なぜ一夫多妻制なのでしょうか?

探究しよう!

 一説では、成立した時代、戦乱が相次いで男性が戦死し、結婚できない女性が大勢出た。
 そこで、結婚できない女性を救うため(その時代、女性は養われる存在)一夫多妻を認めた。
 こんなこと1つ知っているだけで、見方が大きく変わります。
 …それでも、気持ち悪いと思ったら?

さらに探究しよう!

『一夫多妻とは言え、多妻を養える余裕のある男だけに限られる』
 なんて話を聞いても一夫多妻について知ることが出来ます。
 月収30万円の男性なら1人の女性を養うのが精いっぱい。2人の奥さんでは生活が厳しい。だから、奥さんは1人。身の程をわきまえず2人目の奥さんをもらったら、そいつは人間のクズ。でも、月収1,000万円の男性なら?月収1,000万円で1人の奥さんを養うなんて贅沢すぎ!それだけの余裕があるなら多くの女性を養う(助ける)べきだ(富の分配)。
 だから、奥さんを何人ももらう。
 こんな話を聞いただけで、そこに合理性を見ることが出来ます。
 …それでも『私なら絶対に嫌だ!』『他の奥さんが可哀想!』と思ったら?

直接け!

 直接、一夫多妻、多妻のひとりに聞いてください(以下18禁。セクハラで訴えないで・笑)!

『あなたたちは一夫多妻制はおかしいって言うけど、私たちにとってはとてもありがたい制度です。確かに、新婚の頃はラブラブで熱々の愛を交わしたけど、40歳も過ぎたら愛情なんかとっくに覚めてて旦那とのセックスなんて考えただけで気持ち悪い!旦那の下半身は別の若い奥さんに任せ、私は旦那の金で旅行したり遊びまわってればいいの。旦那は若い女性とヤレて幸せ。私は亭主の金で遊びまわって幸せ(笑)。ウィン・ウィンよ!』

 …って聞いた時、激しく納得してしまう中年のオジサン・オバサンは多いはずです(笑)。
 直接聞きたくても英語が話せません?
 CEFRのページをよく読むようにしましょう(笑)→クリック

 不思議に思うことには必ず理由がある、それを探求していく、それを歴史的視点で探求していく。
 最高でしょ、歴史総合!!
 知ることが大事なんです!



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歴史総合③

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