新学習指導要領の英語

CEFR

コミュニケーション能力を学べ!

 コミュニケーションをとる(会話をする)相手が人間である以上、生身の人間との会話能力が必要になってきます。かつての『お受験英語』では身につけられないルールを学ぶ必要があります。ここでは、それらについて説明します。この説明を聞いた後、誰もが「こっちの方が大事じゃないですか!」と驚きます。これまで学んでこなかった(教えられなかった)ことの方が大切だったということに気がつくのです。

社会言語能力

 相手や場面にあった言葉を使う能力のことです。
 例えば、制服を着た皆さんが、駅へ向かう途中に道に迷ったら、周囲の人に道を尋ねるでしょう。そこで、そばを歩いていたおばさんに声をかけます。その時、「ねぇ、駅はどこだい?」なんて聞いたら?そのおばさんはびっくりするでしょう。失礼、とか以前に驚きます。これは、その場面で、見知らぬおばさんと学生との会話として、相応しくない表現だからです。
 こんなことを言うと、それは日本語だから、なんて感じるかもしれませんが、そんなことはありません。英語だけでなく、あらゆる言語には、この社会言語能力というものが必要になるのです。

 

 

談話能力

 会話の流れをつくる能力のことです。
 『談話』と聞くと、普通は『コメント』とか『声明』という意味で捉えます。「日本政府は談話を発表し…」のように。しかし、コミュニケーション能力における『談話』とは、会話の流れを作ることを言います。
 英会話の練習をする際、あらかじめ用意されたシナリオ通りに会話練習をします。

 A「Bさん、こんにちは。」
 B「あ、Aさん、こんにちは。」
 A「お元気ですか?」
 B「はい。私は元気です。あなたは元気ですか?」
 A「はい。私も元気です。」

 …あらためて日本語にしてみると、気持ち悪い会話ですよね(笑)。
 しかし、現実の会話とは、シナリオ通りに続くとは限りません。発した言葉に対して、相手がどのような反応をするのか、分からないからです。

 A「お元気ですか?」
 B「いやぁ~、ちょっと昨夜は飲み過ぎて…。」

 シナリオ通りの会話しか知らない英語学習者には難しいでしょう。
 そこで、ひたすらインター・アクションを繰り返して、会話が出来る思考を頭の中に組み立てなければなりません。そして、シナリオのない純粋なコミュニケーション、意志の伝達を行う会話の流れを作っていく、それが談話能力です。

 

 

ストラテジー能力

 話しをしている時に困ったことがあっても、他の方法で、コミュニケーションの目的を達成する能力のことです。
 例えば、ライターという単語が分からなくても「火をつける道具」と言えば相手に通じます。また、本当は言いたいことがあるのにはっきりと伝える表現が思い浮かばない場合、別の表現で言い換えます。まぁ、連想ゲームみたいに言葉を並べて相手に分かってもらうなんてのも方略の一つになるでしょう。

協調の原理

 協調的な会話を行う能力のことです。上のような能力を駆使して、お互いに不快感を抱かないような会話を行うことです。詳しくは説明しませんが、この原理に反した時、相手に不快感を与えてしまうという原理です。

ポライトネスストラテジー

 そして、協調の原理を守るための方略がポライトネスストラテジーです。会話の参加者がお互いのフェイス(自己決定・他者評価の欲求)を侵さないために行なう言語的配慮能力のことです。

井の中の蛙・日本の英語教育

 私が日本語学校の教室で、偉そうに話したことがありました。
 「日本人とは、以心伝心の世界で、言わなくても分かるだろ?という文化です。だから、直接的な表現を使わず、相手に察してもらうことを求めます。」
 なんて言いながら、
 「例えば、部屋の中が熱い時、日本人は『クーラーをつけて下さい』とか『窓を開けて下さい』とは言いません。『この部屋は暑くありませんか?』と皆さんに言ってきます。けど、それを聞いた日本人なら、相手が暑がっていることを察し、『では、クーラーをつけましょうか?』とか『窓を開けましょうか?』とか言ってきます。これが日本文化です!」
 なんて、自慢げに話しました。
 すると、その教室にいた多国籍の留学生たちが大笑いしました。
「そんなこと、私の国でもあります!」

 そう。
 私がバカだった、と言えばその通りですが、海外(特に英語の世界)では、物事をはっきり言う、日本人ははっきりいわずに相手に察してもらおうとする、という偏見に凝り固まっていたのです。その偏見を与えてくれたのが、私たちの世代が受けた学校の英語教育、お受験の英語教育だったのです。
 コミュニケーションの相手は、紙切れ(テスト用紙)やCD、DVDではないのです。生身の人間なのです。
 そのためにはコミュニケーション能力をしっかりと身につけなければなりません。
 「この部屋は暑くありませんか?」なんて、英語の世界でも言います。遠回しに「クーラーをつけてください」「窓を開けて下さい」の意味です。むしろ、直接、いきなり「窓を開けて下さい」なんて言う場面の方が、どういう場面なんだ?ってなります。

 英語コミュニケーション、しっかりと訓練していきましょう!


これまでの英語教育では、まるで数学の公式を覚えるかのように英語の言語知識を詰込み、英語を『論理的言語だ』などと思い込み、コミュニケーションの相手が人間であることを全く意識して来ませんでした。相手が人間であることを意識した時、これまでのお受験英語では役にたたないことに気がつくのです。

 

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